こんにちは、アヤトです。
今日はNHKが訴えを提起した「受信契約締結承諾等請求事件」について、書きたいと思います。(最大判平成29年12月6日民集71巻10号1817頁)
NHKの受信料払いたくない?
NHKが起こした裁判の内容とは??
まずは今回の裁判の概要をざっくりと見てみましょう。
<登場人物>
・原告・・・NHK
・被告・・・受信設備を設置した者
<状況>
原告が受信契約の締結をしてほしい旨の申込みを書面によって被告に対して行ったが、被告は承諾をしてせず、受信料も支払っていない。
<主張内容>
・原告・・・①受信料を設置当時分から支払ってほしい!
②支払いが遅れている分の損害賠償金も支払ってほしい!
③契約締結の承諾は義務だ!
④今払っていない分の受信料は被告の不当な利益となっている!
・被告・・・①受信契約は義務ではない!
②受信契約を義務とするのであれば、それは憲法違反だ!
③設置してから時間が経過しているので、受信料の一部は時効だ!
裁判はどっちが勝ったの?
<結果>
原告側の勝訴
原告側の「③契約締結承諾は義務だ!」という主張が認められ、それによって「①受信料を設置当時分から支払ってほしい!」という主張も認められた。
なぜ被告側の主張は認められなかったの?
<被告側の主張①について>
最高裁は、契約締結の申込みに対する承諾の義務は憲法上許容される立法裁量の範囲内であると解している。
<被告側の主張②について>
承諾義務の制度は立法裁量の範囲内であるため憲法違反ではなく、受信設備を設置して視聴する自由が侵害されているという被告の主張は認められないと解している。
<被告側の主張③について>
受信料の支払義務は受信契約によって発生するため、裁判における承諾の意思表示を命ずる判決の決定によって、強制的に受信契約を発生させることとなる。そして、強制的な受信契約が成立した時から消滅時効は進行する。そのため、受信料の一部についても時効となっていないと解している。
なぜ原告側の②と④の主張は認められなかったの?
<原告側の主張②について>
裁判における承諾の意思表示を命ずる判決の決定によって、受信契約が発生する。それよりも前の損害賠償請求は契約が発生していないため認められないと解している。
<原告側の主張④について>
受信契約が発生するまでは、被告側も受信料を払う義務がないため、不当な利益とはいえないと解している。
補足の知識
・契約は申込みと承諾によって成立します。(民法第522条1項)
・NHKの放送を受信できる受信設備を設置した者は、NHKと受信契約をしなければならない。(放送法第64条1項)
・契約を締結した者から徴収する受信料の月額は、国会が、収支予算を承認することによって定める。(放送法第70条4項)
・政府はNHKの受信料について「受信契約を締結した者は受信料を支払う義務がある」との答弁書を閣議決定した。(2019年8月15日)
・意思表示をすべきことを債務者に命ずる判決が確定したときは、債務者は、その確定又は成立の時に意思表示をしたものとみなす。(民事執行法第177条1項)
・NHKは、総務大臣の認可を受けなければ、放送を12時間以上(国際衛星放送は24時間以上)休止することができない。(放送法第86条1項)
・NHKは、災害が発生し、又は発生するおそれがある場合には、その発生を予防し、又はその被害を軽減するために役立つ放送をするようにしなければならない。(放送法第108条1項)
・NHKは、公衆の要望を満たすとともに文化水準の向上に寄与するように、最大の努力を払わなければならない。(放送法第81条1項1号)
・NHKは、全国向けの放送番組のほか、地方向けの放送番組を有しなければならない。(放送法第81条1項2号)
・NHKは、日本の過去の優れた文化の保存並びに新たな文化の育成及び普及に役立つようにしなければならない。(放送法第81条1項3号)
・NHKは、公衆の要望を知るため、定期的に、科学的な世論調査を行い、かつ、その結果を公表しなければならない。(放送法第81条2項)
・NHKは、放送及びその受信の進歩発達に必要な調査研究を行うことを業務とする。(放送法第20条1項3号)
・NHKは、邦人向け国際放送及び外国人向け国際放送を行うことを業務とする。(放送法第20条1項4号)
・NHKは、業務を行うに当たっては、営利を目的としてはならない。(放送法第20条4項)
・NHKは、他人の営業に関する広告の放送をしてはならない。(放送法第83条1項)
僕の感想
つまり、受信契約は義務であり、受信契約した者は受信料を払う義務があることがわかりました。
また、受信契約を行わない者に対しては、NHKが裁判を提起し、承諾の意思表示を命ずる判決の決定によって、強制的に受信契約を成立させないといけないことがわかりました。
そして、裁判において裁判官は、受信設備設置者に対して、放送法に定められたNHKの目的・業務等を説明する等して受信契約の締結に理解を得られるように努めることが望ましい旨の発言をしています。
僕から敢えて、受信料を払わなければいけないとか、払わなくても良いとかは言いませんが、上記の記事が皆さんのご参考になれば幸いです。
それでは、皆さんご覧頂きありがとうございました!
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